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東京高等裁判所 平成7年(行ケ)8号 判決 1998年3月19日

広島県府中市目崎町762番地

原告

リョービ株式会社

同代表者代表取締役

浦上浩

同訴訟代理人弁理士

石川泰男

細田益稔

同訴訟代理人弁護士

潮谷奈津夫

同訴訟復代理人弁理士

山本晃司

東京都東久留米市前沢3丁目14番16号

被告

ダイワ精工株式会社

同代表者代表取締役

森秀太郎

同訴訟代理人弁理士

古谷史旺

鈴木榮祐

主文

特許庁が平成6年審判第4179号事件について

平成6年10月24日にした審決を取り消す。

訴訟費用は被告の負担とする。

事実

第1  当事者の求めた裁判

1  原告

主文同旨

2  被告

(1)  原告の請求を棄却する。

(2)  訴訟費用は原告の負担とする。

第2  請求の原因

1  特許庁における手続の経緯

被告は、名称を「魚釣り用糸長計測装置」とする特許第1778054号発明(昭和57年3月9日出願、平成2年5月22日出願公告、平成5年7月28日設定登録、以下「本件発明」という。)の特許権者である。

原告は、平成6年3月2日、特許庁に対し、被告を被請求人として本件発明について無効審判を請求し、同年審判第4179号事件として審理された結果、同年10月24日、「本件審判請求は、成り立たない。」との審決がなされ、その謄本は、同年12月14日、原告に対し送達された。

2  本件発明の要旨(特許請求の範囲の記載)

スプールを回転自在に支承したリール枠体を構成する側板間において、回転可能に支持すると共にバネ部材によりスプール側に付勢された支持アームと、この支持アームの端部に回転可能に支持されてスプールに巻かれた釣糸の外周面に圧接し回転するローラと、このローラにより回転伝達機構を介して回転される回転部材と、この回転部材の回転数及び回転方向に応じた信号をそれぞれ送出し検知する検知手段と、この検知手段からの回転方向信号により釣糸の繰出し、巻取り方向を判別する判別手段と、この判別手段からの判別信号と上記検知手段から得られる回転数信号を取り込むことにより糸長計測処理を行なうマイクロコンピュータと、このマイクロコンピュータを収容すると共にこのマイクロコンピュータの演算出力を表示する表示部を設け、上記リール枠体に装着される制御ボックスとを備えてなることを特徴とする魚釣り用糸長計測装置(別紙図面(1)参照)

3  審決の理由

別添審決書理由記載のとおり(なお、同理由中の審判手続における甲第1ないし第3号証は、それぞれ本訴における甲第2ないし第4号証である。以下、本訴における甲第2号証を「引用例1」、同引用例記載の発明を「引用発明1」(別紙図面(2)参照)といい、本訴における甲第3号証を「引用例2」、同引用例記載の発明を「引用発明2」(別紙図面(3)参照)といい、本訴における甲第4号証を「引用例3」、同引用例記載の考案を「引用考案3」(別紙図面(4)参照)という。)。

4  審決を取り消すべき事由

審決の理由のうち、引用例1ないし3の各記載内容、本件発明と引用発明1との間において審決認定のとおりの一致点と相違点が存在すること、引用例2において、審決認定のとおりの非実測型、電気式の魚釣り用糸長計測装置の計測、表示手段が記載されていること、引用発明2の電気式計測、表示手段は、実測型の計測装置にも使用できるものであること、機械式のものを公知あるいは周知技術に基づいて電気式のものに設計変更することは常套手段に過ぎないこと、そのため、引用発明1における実測型の魚釣り用糸長計測装置の機械式計測、表示手段に換えて、引用発明2における電気式計測、表示手段を適用することは、当業者において容易に想到し得た程度のものであることについては認め、引用発明1に対する引用発明2の具体的適用において、支持アームの端部に支持されている引用発明1の計数装置をなすサイクロメータと表示部を、支持アームから分離してマイクロコンピュータに置き換え、本件発明のようにリール枠体に装着される制御ボックスに設けるようにすることは、当業者において容易に想到されたものではないこと、本件発明の前記相違点に係る構成に基づく作用効果が各引用発明、引用考案から容易に予測できたものではないこと、当業者において、本件発明を各引用例から容易に発明することができないとすることは争う。

審決は、本件発明の引用発明1との相違点に係る構成について、引用発明1及び2の組合わせにより容易に想到することができたにもかかわらず、引用発明1及び2の各構成の技術的意義についての認定を誤り、引用発明1及び2から容易に想到することができなかったとしたものであるから、違法であり、取り消されるべきである。

(1)  審決は、本件発明と引用発明1との間の相違点の判断において、引用発明2の「電気式の計測・表示手段は非実測型のものであるが、実測型のものにも使用できることは明らか」(審決9頁)であると認定するとともに、引用発明1における「機械式の計測・表示手段に換えて甲第2号証(引用例2)記載の電気式の計測・表示手段を適用しようとすることは、当業者において容易に想到しうる程度のことと認められる。」(審決9頁)と認定しているにもかかわらず、「具体的な適用において、支持アームの端部に支持されている甲第1号証(引用例1)記載の計数装置をなすサイクロメータと表示部を支持アームから分離して、マイクロコンピュータに置き換え本件発明のようにリール枠体に装着される制御ボックスに設けるようにすることは、当業者といえども実測型でない甲第2号証(引用例2)記載のものから容易に想到し得るものではない。」(審決9頁ないし10頁)とする。

(2)  しかしながら、本件発明と引用発明1との間の相違点は、本件発明と引用発明1、2の計測・表示手段における型式の相違に基づく具体的構成の一部の相違であるに過ぎず、当該相違をもって、「当業者といえども実測型でない甲第2号証(引用例2)記載のものから容易に想到し得るものではない。」とすることは誤りである。

すなわち、引用発明1と引用発明2とを組み合わせるにあたって、引用発明2の電気式の計測・表示手段を採用した場合、引用発明1の支持アームの端部に設けられたサイクロメータと表示部は不要となり、これらを支持アームから取り除いて分離することは至極当然のことである。

また、電気式の場合には、機械式の場合と異なり、複雑な機械的伝達部材を伴わないため、導電性コード等を用い、支持アームと計測・表示手段とをきわめて容易に連結できるものである。

したがって、引用発明1に引用発明2を組み合わせることが、その具体的な適用においてできないとする理由はない。

(3)  この点について更に述べるならば、引用発明1においては、サイクロメータ24がその内部に歯車等の回転伝達機構を有し、この回転伝達機構を介して、ホイール25の回転が目盛り29に伝達され、目盛り29が回転している。

一方、引用発明2においては、上記の回転伝達機構に相当するギア19と、回転部材に相当するギア体20を備えている。

そして、引用発明1におけるサイクロメータ24に代えて、引用例2の第4図(別紙図面(3)第4図)に示すギア19とギア体20との結合体からなる検出装置8を、引用発明1のホイール25の軸に上記ギア19を取り付けることにより構成するか、又は、引用例2の第6図(別紐図面(3)第6図)の円板28、誘導体29a、29b、29c等からなる検出装置8を、引用発明1のホイール25の軸に上記円板28を取り付けることにより構成するか等して、検出装置8とホイール25とを組み合わせることは、当業者にとって何ら創造力を要することではなく、容易なことというべきである。

この場合、引用発明1のサイクロメータ24の機能は引用発明2の制御ボックスが果たすことになるため、サイクロメータは不要であり、支持アームと計測・表示手段は、当然に分離された状態で構成されることとなる。

したがって、本件発明の構成要件は、引用発明1と2を単に組み合わせることですべて充足され、当業者としては、本件発明を容易に想到することができたものと認められる。

また、引用発明1と2の上記組合せを、両者間の構成の置換として考えたとしても、上記と同様である。

なお、糸長計測装置において、電気式の計測・表示手段を採用し、これを枠体に装着したものは、引用発明2のほかにも存在し、かかる技術的事項は、本件発明の特許出願時において、当業者に自明の事項であったものと認められ、更に、一般に電気的手段を用いると、測定部との分離が容易になることも当業者に自明の事項である。

(4)  他方、引用発明1と2を組み合わせた場合においては、引用発明1の支持アームと引用発明2の計測・表示手段とが分離して構成されるため、表示部が、回転する釣糸捲着面に圧接して連続的に上下動するローラの影響をまったく受けることがなく、糸長表示値を正確に表示することができ、棚取りをする上での操作性を一段と向上させるとともに、支持アームのローラ部への表示機構が不要となる、支持アームをコンパクトにすることができるため、回転可能にスプールを支承した側板間上部の限られた開口部のスプールを広く有効に活用することが可能となり、釣糸繰出し時のスプールへのサミング操作が容易になるといった作用効果を奏するものである。

したがって、本件発明の作用効果も、引用発明1と2の組合せから予測可能なものであり、何ら顕著なものではない。

(5)  以上のとおりであるから、本件発明は、引用発明1及び2の組合わせないしはその間の構成の置換により、容易に発明することができたものである。

したがって、本件発明が、引用発明1及び2から容易に発明することができないとした審決は、その認定、判断を誤ったものというべきである。

第3  請求の原因に対する認否及び被告の反論

1  請求の原因1ないし3の各事実は認める。

同4は争う。

審決の認定、判断は正当であり、審決に原告主張の違法はない。

2  取消事由についての被告の反論

(1)  審決が、本件発明と引用発明1との間の相違点を判断するにあたり、引用発明1に対する引用発明2の具体的な適用において、引用発明1のサイクロメータと表示部を、支持アームから分離してマイクロコンピュータに置き換えた上、本件発明のようにリール枠体に装着された制御ボックスに設けるようにすることは、当業者といえども、実測型でない引用例2から容易に想到し得たものではないとしたことは正当である。

(2)  すなわち、実際的な発明は、一定の技術的思想に基づいて、複数の構成のそれぞれが相互に結合上の関係を持つことにより成立している。したがって、異なる技術的思想の下にある技術間において部分的な構成を分離、置換することは、他の構成との一体性から、容易になし得たものとはいえない。

そもそも、引用発明1は、スプール周面において増減変化する糸巻面に接触する可動式ローラを設けて実測型とするとともに、普通のリールにも使用できるように、支持アーム、計測装置をなすサイクロメータ及び表示部を、リールとは独立したユニットとして形成したものである。そのため、引用発明1には、サイクロメータ及び表示部を支持アームから分離するという技術的思想は存在しないものであるから、これらを分離して、引用発明2のマイクロコンピュータに置き換え、本件発明のようにリール枠体に装着される制御ボックスに設けることはできない。

他方、引用発明2の各部材は、スプール軸の回転数を計測する非実測型のものとして造られたものである。

すなわち、引用発明2においては、スプール軸の回転量から釣糸の繰出し長さを計測しようとすると、スプールに巻かれた釣糸の長さはスプールの糸巻径によって変化し、スプール軸の回転数だけでは現実の繰出し糸長とはなり得ないため、マイクロコンピュータ、計算機等によって予め求めてある計算式等により、スプール軸の回転数から現実の繰出し糸長を算出できる演算処理がなされて、現実の繰出し糸長に擬制された値として表示される。したがって、引用発明2においては、すべての部材がリール枠体に固定されているものであり、そこからそれぞれを分離するという技術的思想が存在しないばかりか、それらの部材を実測型に転用しても機能することはない。そのため、原告主張のように、引用発明1のサイクロメータ24の代わりに、別紙図面(3)第4図のギヤ19とギヤ体20との結合体からなる検出装置8、又は同第6図の円板28、誘導体29a、29b、29c等からなる引用発明2の検出装置8を、引用発明1のホイール25の軸に取り付ける等したとしても、それによりいかなる作用を奏することになるかははなはだ疑問である。すなわち、検出装置8からの値をマイクロコンピュータ、計算機などで演算処理し、その結果を繰り出し糸長として表示することになり、折角ホイール25の軸から現実の繰出し量が得られているのにわざわざ別の値にする操作をすることになるから、組合わせ後の装置は、実測型と非実測型の両方式を併存させざるを得ない、本件発明とは異質の魚釣り用糸長計測装置になる。

このように、引用発明2を引用発明1に具体的に適用することは不可能である。

(3)  これらの点を更に詳述すると、引用発明1のユニット式糸長計測装置の機械式計測・表示手段を、公知あるいは周知技術に基づいて、引用発明2のように電気式とすることは容易である。

しかしながら、引用発明1が、リールとは独立にユニット化するという技術的思想の下に糸長計測装置を構成している以上、引用発明1においては、計測・表示手段をローラから分離し、それをリール枠体に装着するという技術的思想が皆無であることは明白である(引用発明1において、これを牙離することが可能であるならば、ユニット化は達成し得ないし、普通のリールに使用することもできないことになる。)。

したがって、引用発明2において枠体に装着した電気式計測・表示手段が公知のものであったとしても、それを引用発明1に適用することは、同発明の技術的思想に反するから、当業者においてそのことを容易に想到することはできなかったものというべきである。

また、引用発明2は、回転数の検出対象を、釣糸の繰出し、巻取りの長さに直接的に関係せず、かつ移動することのないスプール軸としたことにより、装置全体をリール枠体に固定した構造とし、その結果、非実測型となったものである。このような固定式構造による非実測型の技術と、引用発明1のような可動式構造による実測型の技術とは、技術的思想が異なり、それによる各部構成の機能も異なる。

そのため、引用発明1及び2の各計測・表示手段は、表示手段部分において同様であったとしても、実測型又は非実測型である計測手段部分の機能において、厳密には同じではないのである。

したがって、引用発明2の計測・表示手段を、単純に引用発明1の計測・表示手段に置き換えることは、不可能というべきである。

(4)  以上のとおりであるから、当業者において、本件発明を引用発明1及び2から容易に想到し得たものではないとした審決は正当であり、原告の主張は理由がない。

第4  証拠

証拠関係は、本件記録中の書証目録に記載のとおりであるから、これを引用する。

理由

第1  請求の原因1ないし3の各事実(特許庁における手続の経緯、本件発明の要旨、審決の理由)については当事者間に争いがない。

また、引用例1ないし3の各記載内容、本件発明と引用発明1との間に審決認定のとおりの一致点と相違点が存在すること、引用例2に、審決認定のとおりの非実測型、電気式の魚釣り用糸長計測装置の計測・表示手段が記載されていること、引用発明2の電気式計測・表示手段は、実測型の計測装置にも使用できるものであること、機械式の計測・表示手段を公知あるいは周知技術に基づいて電気式のものに設計変更することは常套手段に過ぎないこと、そのため、引用発明1における実測型魚釣り用糸長計測装置の機械式計測・表示手段に換えて、引用発明2における電気式計測・表示手段を適用することは、当業者において容易に想到し得た程度のものであることについても当事者間に争いがない。

第2  本件発明の概要について

成立に争いのない甲第5号証の1(本件発明についての特許願書及びこれに添付された明細書、図面)、同号証の2(平成4年1月24日付け手続補正書)及び第6号証(本件発明についての平成2年特許出願公告第22883号公報、以下「本件公報」という。)によると、本件発明の概要は以下のとおりであることが認められる。

1  本件発明は、魚釣り用電動リールのスプールから繰り出される釣糸の量あるいは釣糸の巻上げ量を調する糸長計測装置に関するものである(本件公報2欄2行ないし4行)。

2  海釣り、特に沖合での船上において、例えば50mないしそれ以上の深海を回遊する魚を釣る場合、この魚の回遊する層(棚)までの仕掛けを含めた釣糸の繰出し及び巻上げには、船釣り専用リール又は電動リールが使用されるが、その際、スプールから繰り出される釣糸長あるいは巻き上げられる釣糸長を計測することができるようにしておけば、仕掛けを棚に正確に位置させることができるほか、電動リールを使用する場合に、巻上げ時における仕掛けの船べりでの停止等が容易となり、深海釣りを対象とした魚釣り用リールの実用時における操作性がより良好となる(同2欄5行ないし15行)。

しかるに、この種の従来の糸長計測手段は、スプールの回転から糸長を計測する方式を採っているため、糸巻径及び糸径の変化が糸長計測に反映されず、したがって、実際の糸長計測の誤差が大きくなって正確な棚取りができず、釣果に多大な影響が生じたり、また、電動リールとして使用した場合に船べり停止位置の誤差が大きくなり、竿先の折損、糸切れ等が生じるほか、安全性の面でも問題があった(同2欄16行ないし3欄1行)。

3  本件発明は、上記のような従来の欠点を解決したものであり、正確な糸長計測を可能にし、併せて、糸長からリール制御に必要なデータへの変換を容易にした糸長計測装置を提供することを目的として、要旨記載の構成を採用したものである(同3欄2行ないし23行、平成4年1月24日付け手続補正書2頁3行ないし3頁2行)。

4  本件発明に係る魚釣り用糸長計測装置は、その構成により、以下のような作用効果を奏する。

(1)  表示部が、釣糸の繰出し、巻取りにより回転する釣糸捲着面に圧接し連続的に上下動するローラの影響をまったく受けることがなく、糸長表示値を正確に視認することができ、棚取りをする上での操作性が一段と向上する。

(2)  糸長表示の数字を、ローラ及び支持アームの構成上の制約を受けることなく、大きく形成することができるため、表示値が非常に見やすくなる。

(3)  ローラ回転から糸長表示に至るまでの経路の機械的抵抗がきわめて少なくなり、糸長繰出し時におけるスプール回転性に影響を与えることがなく、魚釣りに支障を来さないため、実測型の正確な糸長表示装置の特性を十分に生かすことができる。

(4)  支持アームのローラ部への表示機構が不要となり、支持アームをコンパクトに形成できるため、回転可能にスプールを支承した側板間上部の限られた開口部のスプールを広く有効に活用することができ、釣糸繰出し時のスプールへのサミング操作が容易になる。

(5)  スプール過回転によるバックラッシュ現象が生じても、支持アームに釣糸が絡みにくくなり、実用上のトラブルを未然に回避できる。

(6)  ローラを有する支持アームのリール本体を構成する側板間における取付位置の自由度が増すので、例えば、握持保持性、小型コンパクト化、サミング性、電動リール等の要求による仕様の違いに基づく色々な形態のリールへの展開が可能となる(同手続補正書3頁4行ないし5頁13行)。

第3  審決取消事由について

そこで、原告主張の審決取消事由について判断する。

1  引用例1においては、引用発明1について、下記(1)の内容が記載されていること、また、引用例2においは、引用発明2について、下記(2)の内容が記載されていることについては、いずれも当事者間に争いがない。

(1)  「スプール11を回転自在に支承したリール枠体を構成する側面フレーム13、14間において、回転可能に支持するとともに、圧縮バネ37によりスプール側に付勢されたアーム23と、このアームの端部に回転可能に支持されて、スプールに巻かれた釣糸の外周面に圧接し回転するホイール25と、このホイールの回転数をカウントする可逆作動式カウント機構と、そのカウント値を表示する覗き開口部28付き表示部を有する、回転式計数装置であるサイクロメータ24とを備えてなる、釣糸の繰出し長さを機械式に計測・表示する実測型の魚釣り用糸長計測装置」(別紙図面(2)参照)

(2)  「スプール軸4aの一端に取り付けられた歯車19に噛合して回転されるギヤ体20と、スプール軸の回転方向及び回転数に応じた信号をそれぞれ送出する、ギヤ体20に取り付けられた磁石21とリード・スイッチS1、S2、S3とを含む信号出力手段を有し、該送出信号からスプール軸の回転方向と回転数を検出し、それらのパルスデータを出力する検出装置8と、この検出装置8から得られる出力信号を取り込むことにより糸長計測処理を行う、側枠内に収容されたマイクロコンピュータ10と、このマイクロコンピュータの演算出力を表示する表示器11を備えて側枠間に装着されたキーボード9aとを備えてなる、釣糸の繰出し長さを電気式に計測・表示する非実測型の魚釣り用糸長計測装置」(別紙図面(3)参照)

2  一方、非実測型の引用発明2における電気式計測・表示手段が、実測型の計測装置にも使用できるものであること、また、機械式の計測・表示手段を公知あるいは周知技術に基づいて電気式のものに設計変更することは、常套手段に過ぎないこと、そのため、引用発明1における実測型の魚釣り用糸長計測装置の機械式計測・表示手段に換えて、引用発明2における電気式計測・表示手段を適用すること自体は、当業者において容易に想到し得たものであることについても、前記第1のとおり当事者間に争いがない。

3(1)  上記1、2の事実からみるならば、本件発明の構成を得るため、引用発明1に引用発明2を具体的に適用するにあたっては、まず、原告主張のように、引用発明1におけるサイクロメータ24に代えて、引用発明2の別紙図面(3)第4図に示すギア19とギア体20との結合体からなる検出装置8を、引用発明1のホイール25の軸に上記ギア19を介して取り付けることにより構成するか、又は、同第6図の円板28、誘導体29a、29b、29c等からなる検出装置8を、引用発明1のホイール25の軸に上記円板28を介して取り付けることにより構成するか等の方法により、実測型のホイール25と電気式計測・表示手段のための検出装置8とを組み合わせることにつき、当業者に格別の困難があったものとは認め難いところである。

(2)  そして、成立に争いのない甲第3号証(引用例2)によると、引用発明2における検出装置8は、別紙図面(3)第1図から明らかなとおり、本体プレートと側枠に囲まれた空間(マイクロコンピュータを収容する側枠間の空間)とは異なる空間に収容されており、かつ、上記検出装置とマイクロコンピュータとは信号線により結ばれていることが認められる。

このように、引用発明2における検出装置8の位置が、マイクロコンピュータ及びその表示部の位置とは別個とされていることからも明らかなように、糸長の検出装置は、その構成上、回転を検出しようとする対象物の位置に応じて、適宜の位置に設定できるはずであり、このことは、引用例3においても、回転方向検出型距離センサ3と距離計4とが釣竿上に互いに離れて取り付けられ、その間を信号線5により接続された構威が記載され(この事実も、上記第1のとおり当事者間に争いがない。)、引用考案3のセンサとデータ処理・表示装置とが離れた位置に取り付けられていることが認められることからも裏付けられるものというべきである。

4  以上3の事実からみるならば、引用発明1に対し引用発明2を具体的に組み合わせるにあたり、引用発明1において、ホイールを有する支持アーム(検出装置)から、サイクロメータと表示部を分離して、それをマイクロコンピュータに置き換え、その装置を引用発明2の制御ボックスによりリール枠体に装着することは、当業者において、容易に想到し得たことであり、本件発明の奏する前記第2、3認定の作用効果は、この構成から当業者において予測できる範囲内のものといわざるを得ない。

5(1)  これに対し、被告は、引用発明1について、同発明が、普通のリールにも使用できるように、リールとは独立のユニットとして形成されたものであるから、そこには、計測装置をなすサイクロメータと表示部を、支持アームから分離するという技術的思想が存在せず、引用発明1に引用発明2を適用しても実測型と非実測型の併存したものとなり、これらを分離して、引用発明2のマイクロコンピュータに置き換え、それを本件発明のようにリール枠体に装着される制御ボックスに設けることはできないと主張する。

(2)  そして、成立に争いのない甲第2号証(引用例1)によると、引用例1には、引用発明1について次のとおり記載されていることが認められる。

ア 「本発明は、特に、リールから伸びている釣糸の長さを、自動的に絶えず表示するのに適した装置に関する。特に、釣りの際、リールから伸びている釣糸の端にあるテークル(tackle)が見えないとき、伸びている糸の量を知る必要がある。そこで、一般に、普通のリール取付具(an attachment for usual fishing reels)である釣糸測定ユニットで、伸びている糸の量を、常に比較的正確に表示することが本発明の主な目的である。」(1欄1行ないし11行)

イ 「本発明のもう一つの目的は、普通の構造のリールに釣糸測定装置を取り付ける(略)手段を提供することである。」(同欄16行ないし18行)

ウ 「本発明の糸計測ユニット20は、後側スペーシングバー16に取り付けるようになっており、基本的には、横揺れ軸から伸び、スプール11の糸巻きロールL’と直接噛み合って同スプールを作動させる作動ホイール25’を有する回転式計数装置すなわちサイクロメータ24を載せている、アーム23となる部材22を横揺れできるように取り付けている基礎ブロック21を含む。サイクロメータ作動ホイール25は、制御軸26の延長端に固定され、この制御軸は、基礎部ブロック21に対してサイクロメータを載せている部材22の横揺れ軸に平行であり、更に、同制御軸は、サイクロメータの長方形ケーシング24'に設けてある適当な歯車装置により、周辺に数字29を付けた複数の同軸ディスクの位置を逐次制御し、糸巻きロールL’から遠い方のケーシング24'の側面に設けてある覗き開口部28に、糸の長さを表示できるようにする。」(2欄9行ないし24行)

エ 「サイクロメータ24の機構は、普通のものと同じであり、ディスクの目盛り数字29は、ホイール25が一回転又は何回かの全回転を終わった時点で、覗き開口部28にディスクの数字がうまく表示されるように、制御ホイール25のトレッドの円周に換算された数字からなる。この配置は、基本的には、リールスプール11上の糸巻きロールL’がホイール25と噛み合っている間、同スプール11が回転し、ディスク相互の関係を適当に変更して、その時点でリールから伸びている糸の長さを絶えず表示するようになっている。」(同欄31行ないし42行)

以上のようなア、イの記載及び審決における引用発明1についての認定内容(この認定内容も当事者間に争いがない。)からみるならば、引用発明1におけるアーム、アームの端部に回転自在に支持されたホイール及び表示部を有するサイクロメータは、合わせて釣糸測定ユニットを構成するものであること、また、そのユニットは、普通のリールに対し、取付具として取付け可能なものとされていることが認められるところである。

(3)  しかしながら、前記ウ、エの記載及び前記第1の当事者間に争いのない事実によれば、引用発明1におけるサイクロメータ作動ホイールは、スプールに巻かれた釣糸の外周面に圧接されることにより、糸の繰り出された長さをホイールの回転数に置き換えるものであり、そのため、その機能は、ホイールの回転数をディスクの数値に換算表示するサイクロメータの機能とは別個独立のものであることが明らかである。

更に、ホイールの回転数等を電気的に検出するか機械的に検出するかについては、公知あるいは周知技術に基づく常套的な設計変更というべきものであることは前記第1のとおりである。

そうすると、引用発明1におけるホイールとサイクロメータとは、相互に不可分の関係にあるというものでないことは明らかであり、このことに、前記3(2)に説示のとおり、釣糸の長さの検出装置は、その対象物の位置に応じて、釣竿ないしは計測装置の適宜の位置に設定することが可能なものであることをも考慮するならば、当業者においては、引用発明1の構成から、ホイールをアームの端部に回転自在に支持し、それをスプールに巻かれた釣糸の外周面に圧接させて、移動する糸の長さについての情報を取り出すという技術を容易に認識し、その技術部分を、サイクロメータとは別に採用することが容易にできたものと認めるのが相当である。

(4)  以上からみるならば、仮に、引用発明1においては、被告主張のとおり、サイクロメータと表示部とを分離するという技術的思想が存在しないとしても、そのことが、引用発明1と引用発明2との組合わせを妨げるべき事由となるものでないことは明らかであるから、被告の上記主張は理由がないものというべきである。

6  また、被告は、引用発明1及び2の各計測・表示手段のうちの計測手段については、実測型、非実測型の違いに応じて、その機能が厳密には同じでないから、引用発明2の計測・表示手段を引用発明1の計測・表示手段に置き換えることは不可能であるとも主張する。

しかしながら、上記主張のとおり、実測型及び非実測型における計測手段の機能が、厳密には同じでないとしても、その差異は、それぞれの表示手段における数字データの意味の違いとして現れるものであるから、その差異に応じてマイクロコンピュータによる処理を行うことにより、差異を容易に解消できるものであることは明らかであり、また、上記のマイクロコンピュータによる処理方法自体も、その性質上、格別の困難はないものというべきである。

したがって、被告の上記主張に係る事由をもって、引用発明1に引用発明2を適用することが不可能であると認めることもできないところである。

7  以上によれば、当業者において、引用発明1に引用発明2を適用することにより本件発明を想到することが容易ではないとした審決は、その判断を誤ったものというべきであり、また、その誤りが審決の結論に影響を及ぼすものであることは明らかである。

第4  よって、審決は違法として取消しを免れず、原告の本訴諸求は理由があるものというべきであるから、これを認容することとし、訴訟費用の負担について行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条を適用して、主文のとおり判決する。

口頭弁論終結の日 平成10年3月5日

(裁判長裁判官 竹田稔 裁判官 持本健司 裁判官 山田知司)

理由

Ⅰ. 本件特許第1778054号発明(以下、本件発明という)は、昭和57年3月9日に特許出願され、平成2年5月22日に出願公告(特公平2-22883号)がされた後、平成5年7月28日にその特許の設定登録がされたものであって、その発明の要旨は、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲に記載されたとおりの「スプールを回転自在に支承したリール枠体を構成する側板間において、回転可能に支持すると共にバネ部材によりスプール側に付勢された支持アームと、この支持アームの端部に回転可能に支持されてスプールに巻かれた釣糸の外周面に圧接し回転するローラと、このローラにより回転伝達機構を介して回転される回転部材と、この回転部材の回転数及び回転方向に応じた信号をそれぞれ送出し検知する検知手段と、この検知手段からの回転方向信号により釣糸の繰出し、巻取り方向を判別する判別手段と、この判別手段からの判別信号と上記検知手段から得られる回転数信号を取り込むことにより糸長計測処理を行なうマイクロコンピュータと、このマイクロコンピュータを収容すると共にこのマイクロコンピュータの演算出力を表示する表示部を設け、上記リール枠体に装着される制御ボックスとを備えてなることを特徴とする魚釣り用糸長計測装置。」

にあるものと認める。

Ⅱ. これに対して、請求人は、甲第1号証(米国特許第2874477号及びその抄訳)、甲第2号証(特開昭56-48839号公報)、甲第3号証(実願昭54-143033号「実開昭56-59606号」のマイクロフイルム)を提出して、本件発明は、甲第1号証乃至甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることが出来ないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号により無効とすべきである、旨主張している。

Ⅲ. ところで、請求人の提出した甲第1号証乃至甲第3号証には、それぞれ以下のものが記載されている。

甲第1号証

スプール11を回転自在に支承したリール枠体を構成する側面フレーム13、14間において、回転可能に支持すると共に圧縮バネ37によりスプール側に付勢されたアーム23と、このアームの端部に回転可能に支持されてスプールに巻かれた釣糸の外周面に圧接し回転するホイール25と、このホイールの回転数をカウントする可逆作動式カウント機構とそのカウント値を表示する覗き開口部28付き表示部を有する回転式計数装置であるサイクロメータ24を備えてなる、釣糸の繰出し長さを機械式に計測・表示する実測型の魚釣り用糸長計測装置。

甲第2号証

スプール軸4aの一端に取付けられた歯車19に歯合して回転されるギヤ体20と、スプール軸の回転方向及び回転数に応じた信号をそれぞれ送出するギヤ体に取付けられた磁石21とリード・スイッチS1、S2、S3を含む信号出力手段を有し、該送出信号よりスプール軸の回転方向と回転数を検出し、それらのパルスデータを出力する検出装置8と、この検出装置8から得られる出力信号を取り込むことにより糸長計測処理を行なう側枠内に収容されたマイクロコンピュータ10と、このマイクロコンピュータの演算出力を表示する表示器11を備えて側枠間に装着されたキーボード9aとを備えてなる、釣糸の繰出し長さを電気式に計測・表示する非実測型の魚釣り用糸長計測装置。

甲第3号証

竿2に取り付けられたリール6と、このリールと離れて竿に取り付けられて釣糸の移動量に応じて回転する回転体11と、この回転体に設けられた回転信号発生体13、14からの回転数及び回転方向に応じた信号をそれぞれ検出し送出する信号検出器15を有する回転方向検出型距離センサ3と、この回転方向検出型距離センサからの回転方向信号により釣糸の繰出し、巻取り方向を判別するフリップフロップ22と、このフリップフロップからの判別信号と回転方向検出型距離センサから得られる回転数信号を取り込むことにより糸長計測処理を行なう制御回路23と、上記フリップフロップ及び制御回路等を収容すると共にこの制御回路の演算出力を表示する表示部31を設け、上記リールまたは回転体とも分離して竿に取り付けられた距離計本体4とを備えてなる、釣糸の繰出し長さを電気式に計測・表示する実測型の魚釣り用糸長計測装置。

Ⅳ. 次に、本件発明と甲第1号証乃至甲第3号証記載のものとを比較検討する。

まず、甲第1号証記載のものを検討すると、同号証記載のものの「側面フレーム」、「圧縮バネ」、「アーム」、「ホイール」、「覗き開口部付き表示部」は、それぞれ本件発明における「側板」、「バネ部材」、「支持アーム」、「ローラ」、「表示部」に相当するから、両者は、スプールを回転自在に支承したリール枠体を構成する側板間において、回転可能に支持すると共にバネ部材によりスプール側に付勢された支持アームと、この支持アームの端部に回転可能に支持されてスプールに巻かれた釣糸の外周面に圧接し回転するローラとを備えて、このローラの回転量から釣糸の繰出し長さを計測・表示する、いわゆる実測型の魚釣り用糸長計測装置である点で一致し、本件発明が、リール枠体を構成する側板間において、このローラにより回転伝達機構を介して回転される回転部材と、この回転部材の回転数及び回転方向に応じた信号をそれぞれ送出し検知する検知手段と、この検知手段からの回転方向信号により釣糸の繰出し、巻取り方向を判別する判別手段と、この判別手段からの判別信号と上記検知手段から得られる回転数信号を取り込むことにより糸長計測処理を行なうマイクロコンピュータと、このマイクロコンピュータを収容すると共にこのマイクロコンピュータの演算出力を表示する表示部を設け、上記リール枠体に装着される制御ボックスとを備えて、電気式の計測・表示手段を用いているのに対し、甲第1号証記載のものが上記のような構成を有していない、機械式の計測・表示手段を用いている点で相違している。

そこで前記相違点について検討する。甲第2号証記載のマイクロコンピュータはスプール軸の回転方向と回転数を検出した検出装置の出力信号を取り込むことにより糸長計測処理をおこなっているから、マイクロコンピュータが機能実現手段としての回転方向を判別する判別手段を有することが明らかであり、そして、甲第2号証記載の「歯車」、「ギヤ体」、「検出装置」、「マイクロコンピュータ」、「表示器」、「キーボード」は、それぞれ本件発明の「回転伝達機構」、「回転部材」、「検知手段」」「判別手段とマイクロコンピュータ」、「表示部」、「制御ボックス」に相当するから、甲第2号証には、スプール軸により回転伝達機構を介して回転される回転部材と、この回転部材の回転数及び回転方向に応じた信号をそれぞれ送出し検知する検知手段と、この検知手段からの回転方向信号により釣糸の繰出し、巻取り方向を判別する判別手段と、この判別手段からの判別信号と上記検知手段から得られる回転数信号を取り込むことにより糸長計測処理を行なうマイクロコンピュータと、このマイクロコンピュータの演算出力を表示する表示部を設け、上記リール枠体に装着される制御ボックスとを備えてなる、回転数の検出対象がスプール軸である非実測型の魚釣り用糸長計測装置における電気式の計測・表示手段が記載されているものと認められる。

そして、前記甲第2号証の電気式の計測・表示手段は非実測型のものであるが、実測型のもにも使用できることは明らかであり、また、機械式のものを公知或いは周知技術に基づいて電気式のものに設計変更することは常套手段にすぎないから、甲第1号証記載の実測型の魚釣り用糸長計測装置における機械式の計測・表示手段に換えて甲第2号証記載の電気式の計測・表示手段を適用しようとすることは、当業者において容易に想到しうる程度のことと認められる。

しかしながら、具体的な適用において、支持アームの端部に支持されている甲第1号証記載の計数装置をなすサイクロメータと表示部を支持アームから分離して、マイクロコンピュータに置き換え本件発明のようにリール枠体に装着される制御ボックスに設けるようにすることは、当業者といえども実測型でない甲第2号証記載のものから容易に想到し得るものではない。

また、甲第3号証記載のものは、実測型の魚釣り用糸長計測装置において電気式の計測・表示手段を用いる点で本件発明のものと共通するが、本件発明のローラ、回転部材及び検知手段に対応する回転方向検出型距離センサ、本件発明の制御ボックスに対応する距離計本体、及びリールは、個々に分離して竿に取り付けらたものにすぎず回転方向検出型距離センサも本件発明のように支持アームに支持される構造のものでもないから、前記相違点に示す本件発明の構成を示唆するものではない。

さらに、回転方向検出型距離センサが本件発明のように支持アームに支持される構造のものでない甲第3号証記載のものを甲第2号証記載のものに組合わせても、前記相違点に示す本件発明の構成が当業者とって容易に想到できるものでもない。

そして、本件発明は、前記相違点に示すマイクロコンピュータを収納すると共に表示部を設けた制御ボックスをリール枠体に装着した構成によって奏される「釣糸の繰出し、巻取りにより回転する釣糸捲着面に圧接して連続的に上下動するローラの影響を表示部が全く受けることがなく、糸長表示値を正確に視認することができ、棚取りをする上での操作性が一段と向上する、支持アームのローラ部への表示機構が不要となり、支持アームをコンパクトに形成できるので、回転可能にスプールを支承した側板間上部の限られた開口部のスプールを広く有効に活用でき、釣糸繰出し時のスプールへのサミング操作が容易となる」という実測型の魚釣り用糸長計測装置を備えるリール特有の効果は、甲第1号証乃至甲第3号証記載のものから容易に予測できるものとは認められない。

したがって、本件発明は、甲第1号証乃至甲第3号証記載のものに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認めることはできない。

Ⅴ. 以上のとおりであるから、請求人の主張する理由及び提出した証拠方法によっては、本件発明の特許を無効とすることはできない。

よって、結論のとおり審決する。

別紙図面(1)

<省略>

<省略>

第1図はこの発明にかかる糸長計測装置を備えた魚釣り用電動リールの外観図、第2図はこの発明における糸長計測用センサ部のリールへの装着状熊を示す側面図、第3図はこの発明における糸長計測用センサ部の斜視図、第4図はこの発明のウオームホイールに対するマグネツトとホール素子との配列関係を示す説明図、第5図はこの発明における糸長計測表示のための回路部を示すブロツク図、第6図はこの発明におけるホール素子の出力波形の一例を示す図である。

1…リール枠体、2…スプール、3…釣糸、4…オートドラグ装置、5…制御ボツクス、6…キーボード、7…デジタル表示部、11…センサ部、12…支持アーム、13…支持装置、14…ゴムローラ、15…フレーム、16…軸、17…ウオーム、18…ウオームホイール、19a、19b…マグネツト、20a、20b…ホール素子、21…判別回路、22…マイクロコンピユータ。

<省略>

図面の簡単な説明

図1は、本発明の釣り糸測定ユニットを備え、一部省略した竿に取付けたリールの一部省略側面図である.

図2は、図1のリールと測定アセンブリの拡大平面図である.

図3は、図2の3-3の平面で見た斜視図である.

図4は、図2のアセンブリの後面図である.

図5は、図2の破線5-5から見た一部省略拡大断面図である.

<省略>

<省略>

図面の簡単な説明

図面は本発明の実施例を示すもので、第1図は1  面正面図、第2図は第1図における左側 を した左側面図、第3図は電気回路図、第4図は他の実施例を示す説明図.第5図乃至第7図は検出装置の他の実施例を示す説明図である。

(4)…回転体(スプール)

(5)…ハンドル

(7)…停止装置

(9)…入力装置

(9 )…ーキーボード

(10)…マイクロコンピコーク

(11)…表示

(12)…出力装置

(13)…電

別紙図面(4)

<省略>

図面の  な説明

第1図は釣り竿に本考案を実施した斜視図、第2図は本考案による回転体を示す斜視図、第3図(a).(b)は回転体の方向検出動作を説明するための信号   、第4図は本考案による距離検出回路ブコフタ 、第5図は表示体の正面図である。

3:回転方向検出型距離センサ 4:距離計

11: 転体 13、14:回転信号発生体

15: 号  器 21:カウンタ 23:制御回路 2 :表示体 28:電子音発生器

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